TechLION vol.34「エバンジェリストのお仕事」に登壇しました

TechLIONは公式サイトによると、次のようなイベントです。

TechLIONは、IT文化の振興と、UNIX/Linux文化の楽しさを広く伝え、エンジニア同士の連帯を図ることを目的とするトークイベントです。日々多くの技術が生まれ、消えていきますが、これらの技術を密林の動物たちになぞらえ、百獣の王となる技術を酒を酌み交わしながら発掘・探求しようというイベントです。

個人的な解釈としては、毎回テーマに合わせて著名な人たちを集めてパネルディスカッション的に話を聞いてみるといった感じかなと。何回か聴衆として参加させてもらっていますが、毎回テーマがユニークで面白いイベントです。

今回はテーマがエバンジェリストということもあり、登壇させてもらいました。当日の様子はTechLION vol.34 with tech@サイボウズ式「エバンジェリストのお仕事」 - Togetterにてご覧いただけます。

[9月10日はTechLION!エバンジェリストの仕事と人物像に迫る! TechLION](http://techlion.jp/archives/11843)

はじまる前

エバンジェリストという職業(特にテクノロジーエバンジェリスト)は日本ではまだまだ知名度の低い職業かと思います。聞いたことはあるかも知れないけれど、特殊な会社で特殊な雇用を行っている程度の知名度ではないでしょうか。興味はあるけれど、必要なスキルセットも、キャリアパスも見えないといった感じかなと。

今回、一緒に登壇したLINEの櫛井さん、さくらインターネットの横田さん、日本マイクロソフトの大森さん達はその中でも希有なキャリアを着実に歩まれている方達だと思います。外資系である日本マイクロソフトについては欧米からの文化があるのでエバンジェリストについても十数年前からあったようですが、国内についてはまだまだ一般化されていません。LINE社ですら昨年から立ち上がっているくらいです。

そんな訳で、いったいどういった人たちが話を聞いてくれるのだろうと思っていたのですが、ふたを開けてみると30名以上の方たちが参加してくださって、びっくりといった感想です。TechLIONさんのさすがの集客力ですね。

第一部

前半である第一部は自己紹介が中心でした。MCである法林さん、馮さんがさすがのファシリテーション力で進めていました。ともするとマイクを離したがらない連中(失礼)ばかりなので、大変だなぁと台上から感じていました。

私の時に質問にあったのが「大量の記事を書く」という話でした。極論で言えば、習うより慣れろ、案ずるより産むが易しで「とにかく書いて覚える」という一点に尽きるのですが。発信する癖をつけるためには、何らかのテーマを持たせるのがコツだと思います。私の場合は幸い、オープンソースというテーマで2014年から書いていますし、今はそれに加えてDevRelとして各クライアントのブログ記事を書いています。各クライアント企業はサービスを持っていますので、それに合わせてIoT、アプリ開発、HTML5、ディープラーニングといった絞りを持たせて書けています。

何でも書いて良いよ、というのは真っ白いキャンバスを渡して「さぁ何でも良いから書きなさい」といっているようなもので、なかなか書き始めるのは難しいでしょう。花を書いてください、景色を描いてくださいといったテーマは欲しいものです。自分が好きなテーマを決めて、それを深掘りしたり、横に広げたりしながら書き続けるのがお勧めです。後はとにもかくにも継続性です。

ちなみに、人が何かの分野において達成感を持てるほどになるには、最低10年間の継続性が必要とされています。それによって、その分野における上位何パーセントになれると言われています。さらにそのまま10年間続けるのも良いですし、別な分野とあわせることもできます。そうすると、ある分野と別な分野両方を修めた人になれるのです。これはよほどのことがない限り、オンリーワンな存在と言えるでしょう。個人的にはオープンソース発信という分野と、DevRelの二つの分野を抑えたいと考えています。社会人としての寿命はせいぜい4〜50年程度で、10年間継続性を持たせた活動も4、5回できれば良い方でしょう。目標を明確にし、それと決めたら諦めずに続けるのが肝要です。

第二部

後半はあらかじめ作成されていた質問にあわせて答えていくというスタイルでした。その中からいくつかピックアップして捕捉します。

エバンジェリストの雇用問題

これは良く聞かれますが、こと日本企業においては給与体系と評価軸、求めるスキルセットの問題があると感じています。エバンジェリストは製品や技術に対する情熱がないと難しいとは言いますが、そういった定性的な評価ではなく定量的な評価ができる仕組みと、求めるスキルを明確にしなければならないと思います。外資系の企業はそういったところが明確なのが良いですね。

後はTechLIONの中でも言いましたが、給与軸がエバンジェリスト候補のスキルとミスマッチしているのが現状です。希有なスキルセットを求めて、そんなスーパーマンのような人を雇用するにも関わらず給与体系が一律というのでは日本企業に入りたいと思う人はいないでしょう。彼らは技術力も高いので、外資系に入ってさらに転職を重ねていくのも容易です。能力給や成果給を正しく設定すべきでしょう。

ただ、逆にエバンジェリストの人についても定性的な報告ではなく、定量的に分かるレポートを提出しなければなりません。エンジニア上がりの場合、レポーティングや分析が苦手といった話は良く聞きます。大企業であればマーケティングチームがサポートしてくれますが、小さな企業では難しいです。そうなるとエバンジェリスト自ら分析したり、PDCAを回す必要が出てくるでしょう。

エバンジェリストに求められること

極論、エバンジェリストは自社サービスを知ってもらう、使ってもらうのが仕事です。マーケティングであればAARRRフレームワークが知られていますが、ことDevRelにおいてはAAARRRPフレームワークというのが有名です。これは以下のレイヤーに分かれます。

  • A:Awareness(認知)
  • A:Acquisition(登録)
  • A:Activation(利用)
  • R:Retention(継続)
  • R:Referral(啓蒙)
  • R:Revenue(収益)
  • P:Product(製品)

DevRelはAAARRRP全体に関わりますが、エバンジェリストの仕事としては特に最初の「認知」「登録」に関わることが多いのではないでしょうか。一般的にAARRRはファネル型で、下に進むにつれて絶対数は少なくなります。100の登録者に対して、50の利用者、その中でも継続してくれるのは10…といった具合です。AAARRRPについても同様で、1000の認知に対して登録に至るのは半分もいないくらいでしょう。「認知」を増やし、その後の「登録」や「利用」に至るロスを極力小さくするのがエバンジェリストの指命です。

その施策として、オンラインなのかオフラインなのかは関係がありません。ただ、作りたてのプロダクトにおいては国内や全世界に対して認知度を高めるためにはオンラインの方がコストが低いですし、より深くリレーションを作るならオフラインの方が向いています。この辺りはサービスのステージ、予算感、今期(または今四半期)のKPIやKGI次第といったところでしょう。

エバンジェリストとしての楽しみ、キャリア

個人的にはエバンジェリストはエンジニアとしてのサードキャリアパスだと考えています。一つ目はスペシャリスト、もう一つはゼネラリスト、そして三番目がエバンジェリストです。技術を極めていくスペシャリスト、社内政治やプロジェクト管理などを幅広く押さえるゼネラリストも良いですが、マーケティングとテクノロジーを修めたエバンジェリストも魅力的なキャリアパスだと思っています。

TechLIONではエバンジェリストの平均寿命が3年と言いましたが、これは旅行疲れ以外にももう一つ要因があります。それはエバンジェリストの多くがエンジニア上がりであり、製品開発に没頭できないことに対してストレスを感じたり、自分の技術力が落ちていることに対して危機感を持つためです。そういった人たちはエバンジェリストを辞めた後、システム開発に戻ったりします。

個人的には幾つかのサービスに携わる立場なので、スマートフォンアプリ開発やSaaS、HTML5、IoT、IaaS、ゲーム、ディープラーニング、Web API、決済など幅広い分野に関わってきました。それらの技術を調べたり、サンプルコードを作ったりするのは新しい刺激であり、一つのサービスだけに関わっているだけでは味わえなかった経験だと思っています。また、それらのサービスを組み合わせて新しいものを作ったりするのも面白いです。

どんな人が向いているか

個人的にはエバンジェリストは裏表のない人が向いていると感じます。Twitterの複数アカウントの話がありましたが、裏アカを持って毒を吐くようなタイプは決して向かないでしょう。また、外で話すときと、社内でメンバー(部下など)に接するときで話し方(一人称や相手の呼び方)が変わる人も向いていないと思います。対面する相手に応じて対応を変えたり、態度が違う人はどこかで失敗することでしょう。

テクノロジーが嫌いという人も向かないでしょう(特にテクノロジーエバンジェリストにおいて)。自分がそのテクノロジーが好きであると言い切れないならば止めた方が良いです。そういった温度感は聴衆に伝わります。もちろん、その製品やサービスに対する愛情がないのもダメです。エバンジェリストに啓蒙される人たちは、数年以上に渡る彼ら自身のキャリアパスをあなたの製品に預けるのです。それなのにエバンジェリスト自身が製品に対して情熱を持っていなければ、開発者がなぜ信頼できるというのでしょうか。

ちなみに、こんな意見もありました。

これはとても大事です。当たり前ですが完璧な製品はあり得ません。それは意図があって機能を削っている場合も、スタート時点だから機能がないだけということもあるでしょう。いずれにせよ、すべて全面的に大好きということはあり得ないと思います。でもそんな不足感も引っくるめた上で、好きかどうかですね。それは自分の恋人であったり、子供にも共通するかも知れません。

おまけ

こちらは当日のインフォグラフィック!素晴らしい!

まとめ

ということで、TechLIONさんでの登壇感想になっていない気もしますが、こうやってエバンジェリスト自体の話をさせてもらう機会は多くないので、貴重な機会をいただき感謝しています。聞き慣れない職種ですし、キャリアパス(どうやったら慣れるのかなど)も明確になっていない職業なので、ピンと来た方がいるのか分かりませんが…。少しでも興味を持ってもらえたなら嬉しいです。

ちなみに(こちらが本題?)そういったエバンジェリストの方達が多く集まるコミュニティが DevRel Meetup in Tokyo になります。エバンジェリストに興味を持たれた方は、ぜひイベントに来てください!