DevRelのコンテンツマーケティングの基本を解説します。前回はテックブログとの違いを解説しましたが、その中でも取り上げたオーディエンス理解について、もう少し詳しく説明します。
コンテンツマーケティングにおけるオーディエンスとは、読者や視聴者(以下、対象者とします)のことです。そして、対象者は自社サービスが対象としている開発者になります。
開発者がコンテンツにたどり着く方法は幾つかありますが、Web検索やソーシャルメディアが最も有力です。
Web検索はプル型のメディアです。つまり、何か課題があり、それを解決するために検索しています。その課題と、解決策を事前にコンテンツとして用意しておくのが一つの手法になります。
自社サービスが対象としている開発者が「日々の業務の中でどんな困りごとを感じているか」を探求するのがオーディエンス理解になります。
この場合、あまりビッグなキーワードで検索することは多くありません。より、実践的な検索ワードを利用するでしょう。エラーメッセージで検索する場合もあるでしょう。
プロダクトの採用決定権を持つ人を対象とした場合、「(テクノロジー)とは」といったビッグワードで検索するケースがあります。つまり、業界について手軽に情報を得たいというニーズです。
ソーシャルメディア(XやFacebookなど)を経由した流入では、シェアを誘うようなコンテンツが最適です。日本でははてなブックマークが今なお強く、ブックマーク数が伸びることで流入を爆発的に増やせる可能性があります。
この場合、ごく細かい技術記事よりもまとめ記事のようなものの方が伸びる可能性があります。初級者〜中級者に対して、中長期的に利用できるコンテンツが好まれるでしょう。
また、良質なコンテンツは開発者の間で議論を呼びます。そうしたコメントはソーシャルメディア上で行われることも多く、結果として拡散を生むでしょう。拡散という意味では炎上系コンテンツも同じですが、もちろんこれはブランドを毀損するので狙ってはいけません。
サービスをリリースした直後などで、オーディエンスを正しく理解できていない場合があります。意外なことですが、自分たちが考えていたターゲットと、求められていたターゲットが異なることは多々あります。
もちろん、調査は行っているはずですが、それでも難しいこともあるでしょう。たとえばサーバーサイドで利用する場合に、どの言語が最も望まれているか知るのは困難です。エンタープライズ向けではJavaや.NETかも知れませんし、PHPやRuby、Python、Go、Rust、Node.jsなど言語は多種多様です。すべての言語に対してSDKを提供するのは困難です。
そこで、まずはSDKを利用しない方法(HTTPを直接実行する方法)で、各言語向けの記事を書いてみましょう。その中で最も読まれているものは、開発者が望んでいるものである可能性が高いです。
これは一例ですが、アクセス解析と組み合わせることで、開発者の隠れたニーズをうかがい知れます。開発者が困っているであろうことを書く場合もそうです。実際に困っているかどうかはアクセスを見れば分かります。その結果は、新しい機能開発への良質なフィードバックになり、マーケットフィットに貢献するはずです。
この時に大事なのは、コンテンツがなければアクセス解析にも引っかからず、ニーズを掴めないことです。つまり、ターゲットを尖らせすぎると、未来の顧客を逃す可能性があります。ブログなどはさまざまな実験ができる場であり、どういったニーズがあるのか積極的に探っていきましょう。
ではオーディエンスを理解する方法をステップバイステップで紹介します。今回は簡単な3ステップです。
オーディエンス理解を行う際には、まずペルソナ設計が重要です。つまり、自分たちのサービスがどんな開発者に使われるのか対象を具体化するのです。
「開発者」では広すぎてはっきりしませんので、幾つかのタグを追加していきます。
こうしてタグ付けを行っていくことで、解像度が上がっていくはずです。
続いて、彼らの感じている課題を明確にしていきます。これはなぜでしょうか?もし、何の問題も感じていないなら、あなたのサービスを利用する必要がないからです。
このような流れでユーザー登録やお問い合わせにたどり着きます。
チームでペルソナ設計を行い、課題感を洗い出していくのは大事ですが、一番早いのは実際にユーザー候補に会って話を聞くのがベストです。
インタビューする方法は幾つかありますが、一番お勧めなのはコミュニティへの参加でしょう。コミュニティに参加して、懇親会などで話をしてみるのです。調査会社などを通したインタビューよりも、より実践的で具体的な課題が聞けるかも知れません。
もちろん、社内のメンバーに話を聞くのもお勧めです。社内メンバーであれば、忌憚ない意見が聞ける可能性があります。同様にグループ会社のエンジニアに聞いてみるのも良いでしょう。
自社サービスが成長したり、市場の変化によって開発者の考えは変わっていきます。フロントエンドのように変化の激しい業界では、すぐにトレンドのテクノロジーが変わってしまいます。1年前には正しく理解できていたのに、あっという間にずれてしまうかも知れません。
そのため、オーディエンス理解は定期的にアップデートが求められます。コミュニティに継続的に参加して肌感を高めたり、ブログなどを通じてトレンドの変化を掴めるようになっていると良いでしょう。肌感を高めておくと、ふと情報の流れが変わったり、新しい注目サービスが登場したのをいち早くきゃちアップできるでしょう。
IT業界ではシューティングスター(日本風に言えば黒船)が突如と現れ、市場をまったく別物に変えてしまうことが良くあります。いわゆるゲームチェンジャーですが、IT業界ではどの国から現れるか分かりません。最近ではAI・LLMなどがその一端でしょう。こうした風向きの変化を機敏につかみ、方針を変更することが長期的な成長につながるのです。
今回はコンテンツマーケティングにおけるオーディエンス理解について紹介しました。経験上、意外と対象開発者を正しく理解していないケースは多いです。それはチーム内での議論に終始し、予想だけで話しているケースに多いかと思います。実際に会い、現場を知っているかどうかは大きな違いにつながります。
ぜひ正しいオーディエンス理解に努めて、最適なコンテンツマーケティングを遂行してください。MOONGIFTではDevRelのコンテンツマーケティングを支援しています。お気軽にお問い合わせください。
メールにてDevRelに関するニュース、アップデートをお送りします。
Contact is below.