DevRelのコンテンツマーケティングの基本を解説します。今回は配信チャンネルについてです。コンテンツごとにどういった配信チャンネルを選ぶべきかを取り上げます。
コンテンツの種類と、主立った配信チャンネルを挙げます。
ブログ記事は、独自ドメインとそれ以外で大別されます。それぞれ、メリットデメリットがあります。
コンテンツの自由度は最も高いです。技術記事はもちろん、技術以外のコンテンツも掲載できます。万一ホスティング先サービスが閉鎖したとしても、別なホスティングに移行すれば継続できるという点も大きなメリットです。
対して、ホスティング費用やシステムのメンテナンスコストが発生するのがデメリットです。ただし、静的HTMLをCloudflare PagesやFirebase Hostingなどでホスティングすれば、セキュリティ的なリスクをほぼない状態で運用できます。
WordPressホスティングであったり、はてなブログを利用する方法です。メリットは、申し込みからすぐに利用できる点でしょう。あらかじめ用意されているテーマを使ったり、UXも優れているので使いやすいはずです。
デメリットとしては、利用できるプラグインや掲載できるコンテンツに多少の制限があることです。はてなブログの技術ブログプランは割安ですが、掲載できるコンテンツは技術系のみに限られます。
WordPressホスティングは別サービスへの載せ替え時のURL変更が起きる可能性は低いでしょう。はてなブログの場合、移行時にURLが変わってしまう可能性が多少あります。
Qiita/Zenn/noteなどを利用する方法です。この場合も、登録からすぐにコンテンツ配信できるのが大きなメリットです。また、開発者が数多く使っているので、まったく知られていない状態からでも一定のPVが期待できます。
逆にデメリットは、投稿できるコンテンツに制限があることでしょう。また、多くの開発者が投稿しているだけに、すぐにコンテンツが埋もれてしまう点もあります。
そして、何よりもブランディング形成が難しいという点が挙げられます。
開発者用のドキュメントについては、公式サイトに載せるのが一番です。ただし、開発用ドキュメントは専用のジェネレータを使うことが多く、他のコンテンツがWordPressなどで運用されていると別ドメイン(サブドメイン)運用になることもあります。
動画コンテンツの場合、外部サービス利用と自社ホスティングの2パターンに分かれるでしょう。
動画配信として利用できるのは、主に以下のサービスになります。他にもありますが、DevRel文脈で使われるものに限っています。
利点は強力なネットワークとストレージを利用できることです。また、ソーシャルサービスは多くのユーザーを抱えており、一定の閲覧数を期待できます。
デメリットは投稿できるコンテンツに一定の制約がある点です。各サービスごとに配信できるコンテンツの決まりがあるので、その規約に沿ったものを配信しましょう。たとえば、セッションの中で商用音楽を流してしまったために、公開できなくなることもあります。
自社ホスティングの場合は、配信するコンテンツの制限はありません。もちろん、他者の著作権を侵害するものは配信できませんので、その点は注意が必要です。
デメリットは、閲覧に十分耐えられる品質のネットワークとストレージが必要ということです。そうした動画配信専門のクラウドサービスを利用する方法もあります。
ポッドキャスティングも最近はコンテンツマーケティングとして取り組まれています。基本は動画と同じですが、ポッドキャスティングは動画ほどネットワーク帯域は使わない半面、ダウンロードされるコンテンツである点に注意が必要です。
ポッドキャスティングを管理、配信できるサービスとしてはSpotifyが有力です。Anchorを買収し、現在はSpotify for Podcastersとしてサービス展開しています。これを使えば動画や音声ファイルをアップロードして、ポッドキャスティング配信できます。
SpotifyからAppleをはじめとする各種サービスに配信できるので、一元管理できるのが便利です。Spotify経由でのユーザー獲得も狙えますし、リスナーなどの解析機能があるのも便利です。
デメリットは、アップロードできるコンテンツが外部サービスの利用規約に合わせる必要がある点でしょう。とはいえ、これはDevRelにおいては大きな問題にはならないと思います。
ポッドキャスティングは音声ファイルをアップロードして、それに合わせたXMLフィードを配信するだけで提供できます。そのため、独自URLでホスティングも可能です。
メリットは万一の時の配信コントロールができることでしょう。また、独自URLで提供できる点もメリットです。デメリットとしては、認知拡大させる方法を別途考える必要がある点と、Google Analyticsのような仕組みが使えないので、利用解析方法を別途考える必要があることです。
登壇資料などのスライドです。この場合、独自で配信するメリットはあまりなさそうです。
スライドを共有できるサービスとしては、以下が知られています。
SpeakerDeckはGitHubが提供しているサービスだけあって、開発者周りで人気です。対応フォーマットがPDFしかないのが難点ですが、ブログなどへの埋め込みもできるのが便利です。
Slideshareはかつて人気でしたが、LinkedInに買収された後の売却され、サービスの方向性が迷走しているように感じます。サービスの継続性という点において、若干のデメリットを感じます。
自社でホスティングする場合、PDF.jsのようなライブラリで埋め込み表示する方法が考えられます。コンテンツコントロールはしやすいというメリットがあります。また、自社の認証システムと連携させるような使い方も考えられるでしょう。
PDFファイルをダウンロード&閲覧する方法もありますが、ユーザー体験は悪いのが難点です。
認知拡大のために、電子書籍を配布する施策です。白書であれば自社ホスティングも良いですが、基本は外部サービス利用になるでしょう。
自費出版の電子書籍配布サービスとしては、以下が挙げられます。
KDPはAmazonのプラットフォームを利用できるので、そのメリットは計り知れません。有料の場合、手数料がそれなりにかかりますが、無料での配布も可能です。
技術書典はあらかじめ技術書典のサークルとして登録、参加する必要があります。技術書典の実施期間はダウンロード数が一気に増えるので、配布数の波はありますが、KDP以上のセールスパワーがあるのは魅力です。
いずれのサービスも出版する際には審査があります。そぐわないコンテンツは配信できないので注意してください。
Zennは普段のブログ記事を書くように電子書籍を作成できます。徐々にコンテンツを書きためて、できあがったら販売(無料も可)を行うという方法が取れるのが魅力です。Zennは審査はありませんが、もちろん公開できるコンテンツや規約に沿ったものになります。
白書や、フォーム入力後の電子書籍配布などであれば、自社ホスティングになるでしょう。ただし、ePubでもPDFでもダウンロードすればその後は追えません。社内で複数人に配布されたとしても、その状況をトラッキングしたりできません。そのため、申込数と実際に読まれた数は乖離する可能性があります。
また、基本的にDRMのような仕組みは設けられないと考えた方が良いでしょう。
では実際にどの配信チャンネルを使うべきかを考えると、それは目的によるというのが答えになります。多くの場合は、以下のようになるでしょう。
形態 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自社ホスティング | 配信コントロールしやすい | 開発・メンテナンスコストが発生 |
外部サービス | ネットワークやストレージ、機能が潤沢 | 利用規約による制限。プラットフォームの意向が変わるリスク |
そういった意味では、認知拡大を狙う場合には外部サービスを利用する方が、手軽に多くのオーディエンスにアプローチできる可能性があります。既存ユーザーに対して、ロイヤリティを高める目的であれば、自社ホスティングで行った方がコントロールしやすいでしょう。
どの外部サービスを利用するかの判断は、利用規約やオーディエンスの多さによって変わります。YouTubeで指定したユーザーだけに配信するのは面倒ですが、Vimeoならパスワードロックがあります。投稿できるコンテンツや利用方法の制約はそれぞれ異なるので、利用規約を必ず確認しましょう。アカウントをバンされてしまうと、今後の活動にも支障をきたします。
外部サービスを利用する場合、プラットフォーマーの意向によって戦略修正を余儀なくされるリスクを常に懸念すべきです。そのため、一つだけに依存するのではなく、複数のサービスを平行利用するなど、リスク分散が必要です。
同じコンテンツであっても、配信チャンネル次第でまったく読まれなかったり、逆にバズる可能性があります。基本は、読み手がいる場所にコンテンツを投稿するという考えですが、長期的なブランド構築やコンテンツコントロールも視野に入れる必要があるでしょう。
マルチポストについてはお勧めしませんが、最初は複数のサービスを並列で使いながら反応を見てみるのがお勧めです。盲目的に選択するのではなく、自社にとって最適なプラットフォームはどれか、慎重に検証してください。
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