ビジネスモデルは無数にありますが、特にDevRel(さらに言えば自社製品向けDevRel)に向いたビジネスモデルは何があるでしょうか。今回はビジネスモデル別に考えてみます。
Appleの製品は三つの面があります。一つはiPhone、iPodのようなコンシューマ向けの製品です。そしてもう一つはMacBook Proなどのプロフェッショナル向けの製品です。そして最後はApp Storeにおけるアプリ販売を行うビジネスになります。コンシューマ向けの製品が広がることで、アプリ販売を行うニーズが強くなります。そして、そのアプリを開発するためにMacBook ProやMacProといった開発者向けの製品が売れます。
このようなプラットフォームビジネスの場合、根幹を支えるのは圧倒的なシェア、ユーザ数になるでしょう。手数料を払ってでも、多数のユーザに届くことが肝心です。つまりiPhoneが売れなくなる、Androidの方が圧倒的なシェアになるのはAppleのビジネスモデルが崩壊するのを意味しているでしょう。
同様の手数料型ビジネスとしてはGitHubのアプリストア、WordPressのプラグインストアなどが知られています。いずれの場合も高いシェアがあるからこそ成り立つモデルであると言えるでしょう。
ユーザシェアを高めることができれば、それだけ開発者の注目を集められます。DevRelとしては製品のユーザシェアが高ければ進めやすく、低いととても進めづらくなります。セミナーなどを通じて自分たちのプラットフォーム対象ユーザ層、数、事例などのアピールが効果的です。
AWSやGCPなど従量課金によるサービス提供を行っています。従量課金は利用していない限りは料金が発生しませんが、多くの場合一度使い始めると途中で止めることができません。Amazon S3で少しでもストレージを使っている以上、課金も継続的に行われます。
このビジネスモデルの場合、最初にクレジットカードを登録してもらうことが多いです。課金手段の提供は最も心理的障壁の高い行為であり、それを最初のモチベーションが高い時にやらせてしまうのは一定の効果があります。クーポンなどで使い始められるようにすると利用開始までの心理的障壁は低いものの、クーポンの切れ目が縁の切れ目になってしまうこともしばしばです。
AWSなどは従来完全従量課金型でしたが、多くの代替サービスが登場する中で、無料枠を設けることが増えています。一定量まで無料で使い続けられ、さらに有料になっても格安で使えるようになっています。
DevRelとしてはハンズオンなどでは無料のチケットが欲しくなるでしょう。また、登録時にクレジットカード必須であったりすると、それだけで障壁になります。この手のサービスでは体感してもらわないと魅力が伝わりづらいです。有効なのはハッカソンやハンズオンなど実際に手を動かすものになるでしょう。
StripeやTwilioなどに代表されるモデルで、1トランザクションあたりの課金になります(Twilioはバルクのチケット購入なので若干違います)。Stripeが面白いのは、決済した金額の中から手数料を取ることです。そのため、いわゆるカード決済が落ちないなどの掛けリスクがないモデルになります(不正利用によるリスクはあると思いますが)。
トランザクション型モデルは、利用がないと売り上げの発生しないビジネスになります。月額最低料金を設けるものは現在では選ばれづらいでしょう。App Storeの決済などもトランザクション型モデルです。Appleの場合、アプリ内課金においては必ずApple Payを使うように決められており、その手数料30%は一般的なクレジットカードに比べると10倍近く高い料金になります(通常のカード決済は2.3〜3.0%程度)。
この手のサービスはビジネスと直結しているものが多いです。そのため魅力的な選択肢であれば使ってもらえる可能性が高くなります。そのためには事例、ドキュメント、API設計など、すぐ使えそうだと感じてもらえるのが肝心になります。
いわゆるSaaSで一般的なビジネスモデルです。多くの場合、機能を押さえたフリープラン、少し便利にしたプロプラン、さらにチーム、エンタープライズと4つ程度のプランに分かれています。多くのSaaSベンダーではチームプランを推すのですが、プロプランの課金(一番低い課金プラン)が多いのが実態のようです。
サブスクリプション型の場合、最初にフリープランから入るので敷居が低いのが利点ですが、課金に至るステップが難しくなりがちです。なんとかして無料で使い続けようとするユーザも多く、ベンダー側の思惑通りに動かないケースが多くあります。DropboxやSpotifyなど様々なサービスがサブスクリプション型モデルを採用しています。
SaaSで開発者向けというのは実はあまり多くありません。利用者は開発者ではなく、バックオフィス担当者や営業担当者など向けのサービスが多いです。そしてAPIを提供して開発者に訴求します。この手のサービスにおいて、開発者に訴求するのは業務で役立ててもらう、またはプロダクトを作ってもらうのどちらかになるでしょう。前者の場合、主なターゲットはすでに製品を導入している企業、SIerになります。後者の場合は小規模な開発会社や個人のフリーランスなどになります。開発パートナー制度やサポートが有効なケースが多いです。
サブスクリプション型をさらに簡単にしたアカウント課金型もあります。Google Appsなどは1ユーザあたり月間600円(4月より680円)となっています。サブスクリプション型モデルの場合、チームはユーザ数3人となっていて2人しか使わない場合に1ユーザ分余ってしまったりするのですが、アカウント課金型の場合はそういった心配がありません。
この場合も取り組みとしてはサブスクリプション型モデルと大きく変わらないでしょう。
DevRelにおいては開発者が重要なステークホルダーであるのは間違いありませんが、サービスの利用者と決済決定権を持っている人たちによって取り組みが若干変わってきます。開発者に販売するのはシンプルですが、多くの場合開発チームでは大きな予算を持っていません。IaaSくらいになるでしょう。
DevRelにおいてはステークホルダーの立ち位置、狙いを見極めた上でアプローチを考えないといけません。それを見誤ると、ユーザ数は増えているけれど利益に繋がらない、サポートコストは増大するけれど売り上げが上がらないといった事態になるでしょう。ご注意ください!
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