DevRelの特徴、2回目です。前回のアクティビティ主体に続き、今回はボトムアップに関する説明をしたいと思います。
旧来のマーケティングは広告主体であり、一般的に決定権を持つ層に対するアプローチが行われてきました。つまりトップダウンです。経営層はもちろん、プロジェクトマネージャなどが対象になってくるでしょう。彼らはお金の計算が第一であり、同じような結果が得られるのであればより価格の安い方やネームブランド的に信頼できる方を選択します。
対するDevRelは開発者向けの活動であり、現場で働く人たちに対してアプローチします。トップダウンとボトムアップ、その違いはどこに現れるでしょうか。
大きく違う点として勉強会やセミナーなどの時間帯が大きく違います。開発者向けの大型イベントとしてはGoogle I/O、AWS Summit、Uniteなどは日中に行われますが、数は限られます。もっと規模の小さい10〜100名規模のイベントの場合、平日の夜に行われるのが一般的です。平日の昼間にイベントを行っても集客は絶望的でしょう。
対して経営者やマネージャ層向けのイベントの場合、昼間や午前中のが集客しやすいかと思います。ごく小さな企業の経営者の場合は夜のが集まりやすいかも知れませんが、企業内における階層が上になるにつれて、営業時間中の活動がしやすくなる傾向があります。
DevRelの場合、開発者向けの活動になりますので基本的にイベントは平日夜、または週末の午後などに行うのが一般的です。
トップダウンでのアプローチの場合、コストメリットを謳うのが一番訴求力を持ちます。生産性の向上も大きなメリットと言えますが、それに比例してコストが増大しては意味がありません。
ボトムアップでのアプローチの場合、コストは低コストであるのは欠かせませんが、0円と1円の壁が大きく存在するのを忘れてはいけません。いきなり開発者にお金を払って使ってもらおうと考えているならば、それは大きな失敗につながる可能性があります。お金を出すのにそれほど障壁がないと思われるAmazon Web Servicesにして1年間の無料枠を設けていたり、さくらのクラウドは2万円分のチケットを配っていたりします。通常のWebサービスにおいて、いきなり支払いが発生するモデルはとても難しいと言えるでしょう。
そのため、開発者に対してアプローチする場合はお金のことはさておき、機能とそのサービスを使うことで見えてくる“可能性”について訴求する必要があります。つまり、
という流れが見えなければなりません。単に機能が多ければ良いという話ではなく、そこから見える可能性こそが重要なのです。
経営層やマネージャ層が気にするメディアは一般的に信頼性が高いとされ、オフラインメディアに近い傾向があります。対して開発者が目にするメディアは先進的で、カジュアルなものが多くなります。先進的なメディアというのはできてからの歴史が浅いので、利用者の年齢層とも近いと言えます。これは広告を出す場合には基本中の基本と言えますが、こと開発者向けメディアというのを探そうと思うとそう簡単には見つかりません。
現在、多くの開発者はGoogleなどの検索エンジンを使って必要な情報を必要なタイミングで探しに行く傾向があります。そのため、どこか一カ所に集まっていて、そこに潜り込めばアプローチできるというものではなくなっています。ユーザ会といったものもありますが、今はメーリングリストが活発なユーザ会を探すのは難しいかも知れません。
そこで考えたいのはソーシャルメディアになります。ソーシャルメディアというのは従来メディアのように一極集中型になりたっていません。フォロー、フォロワーと言った具合に自分が購読したいと思う相手だけを集めて自分だけのメディアを作ることができます。かつソーシャルメディアは基本的にフローであり、発信した情報もどんどん流れていってしまいます。瞬時に陳腐化していってしまう中で、自分の情報をいかに注目してもらうかは大きな課題になるでしょう。
しかし逆に考えればソーシャルメディアを通じてつながることができれば、それは相手から信頼を得られた証とも言えます。そのためDevRel活動の結果としてソーシャルメディアのフォロワー数、いいね数を指標の一つにすることはよくあります。
トップダウンでの営業スタイルは総じて個々の営業およびその上長レベルでの営業になります。つまり営業力のある会社はトップダウンでのマーケティングを推し進めます。この場合、料金体系はオープンではないことが多く、個々の案件によって価格帯が決まります。
ボトムアップの場合、Webサイト上に価格を提示してしまうことが殆どです。料金体系を明確にすることで、有償利用を開始した際にどれくらいのコスト増が見込まれるのか分かるようになります。ただし海外の場合は従量課金であるケースも多く、その場合は実際に使ってみないと分からないこともあります(Amazon Web Servicesのように)。
対面営業のように契約までに多くのステップを踏んで行える場合はトップダウンの営業でも良いですが、Webサービスをグローバルに展開したい場合はそうはいきません。その場合はDevRelか否かに関わらずボトムアップな形にせざるを得ないでしょう。
ボトムアップでマーケティングを行うメリットは何があるでしょうか。一つ挙げられるのは、ここ数年Webに限らずサービス、製品が氾濫しており類似のものもたくさん存在しています。そうした中で製品を選定する材料として、マネージャがメンバーに聞くことがあるということです。つまり選択肢が多すぎるために、実際に使う立場にある現場の意見を尊重するのです。その時、DevRelを通じて製品を知ってもらっていれば、選択の土俵に上がれるのです。特にメリットや使い方を知ってもらっていれば、選択肢として有力になるでしょう。
DevRelが活発に行われていない現在はマネージャ層の信頼するメディアに掲載されているバナーであったりPR広告の量、営業担当者の意見が尊重されることになるでしょう。その結果として使い勝手の悪い、現状に合っていないシステムが数多く導入され、現場が疲弊するのです。ボトムアップの活動は結果としてマネージャ層を動かす可能性があります。
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