DevRelにおける開発者ステージ

DevRelにおける開発者ステージ

一般的なマーケティングというのはマーケティング部でリードを作り、リードに対してインサイドセールスを仕掛け、見込み顧客にフィールドセールスを展開します。マーケティングにすれば作ったリードを適切にインサイドセールスに渡せれば、後は営業部門がクロージングまで持っていってくれる訳です。

対してDevRelではどうでしょうか。一般的にDevRelにおいて、開発者は直接購入者ではなかったり、決裁権を持っていなかったりします。また、彼らのリストを営業部門に渡したところで、営業部としては困ってしまうでしょう。一般的なマーケティングとセールスという考え方とは別枠で考える必要があります。

DevRelにおける開発者のステージは全部で8つの段階に分けて考えることができます。

  1. Unknown
  2. No opportunity
  3. Hate
  4. Beginner
  5. Inactive
  6. Unaggressive
  7. User
  8. Fun

フローチャートではこんな感じ。複雑ですね…。

1. Unknown

自分たちのサービスに関する情報が届いていない開発者です。彼らに情報を届けるためにはブログや動画、ポッドキャスティング、ソーシャル、ブース、ハッカソンなどを使う方法が考えられます。ただし、広告などを使って届ける情報は殆ど刺さりません。

一番良いのは4、7、8の段階にある開発者たちが生の声を発信してくれることです。彼らの書いたブログやソーシャルメディアをきっかけに知ってくれる開発者は多いでしょう。

2. No opportunity

サービスを知ってはいるが、使う機会のない開発者です。彼らに使ってもらうためにはハンズオン、デモアプリ、チュートリアル、ハッカソン、事例などが有効です。利用機会さえあれば使ってもらえる可能性があるので、彼らがジブンゴトにできるコンテンツを提供できるのが良いでしょう。

4、7、8にある人たちの使い方や、体験はファーストステップに有効でしょう。

名刺交換やソーシャルでのつながりで相手の情報を掴んでおくのも大事です。

3. Hate

サービスを知ってはいるが、極端に使うのを嫌がる人たちです。技術的宗教上の理由であったり、ブランディング的に嫌がる人たちもいます。彼らに対しては無理にアプローチする必要はないでしょう。風向きが変わるのを待つのが一番で、無理にアプローチすると波風を立てることになります。

4. Beginner

まさに使い始めた人たちで、ここから次の段階に上手に進めなければなりません。無料で使い始められるサービスの場合、利用開始までの敷居は低くて済みます。有料サービスであっても、最初にクーポンを使うことで有料サービスを受けられるようにすることで同様に敷居を下げられます。

ファーストタッチコンテンツの把握、ソーシャルアカウントによるコンバージョン測定が重要です。また、メールマガジンやソーシャルを通じた繋がりを継続できると良いでしょう。

5. Inactive

サービスに登録しているがアクティブではないユーザです。この期間をなるべく短く再活性化しなければなりません。あまり長くなるとアクティブにするのも大変になります。ニュースレター、ハンズオン、事例、アップデート情報などを通じてサービスが盛り上がっていることを示さなければなりません。

8の段階にいる人たちを含めたコミュニティなどは刺さりやすい情報になるでしょう。

この段階にいる人たちに上手にアプローチすることができれば、1や2の開発者よりも低コストにアクティブユーザ獲得に繋げられるはずです。

6. Unaggressive

登録して、利用しているけれどもアグレッシブではない開発者です。無課金ユーザも含まれる場合があります。課金していながらもアグレッシブでない場合、無用なアプローチによって退会につなげてしまう場合もあるので注意が必要です。

調査段階は個人利用だった開発者も含まれます。この場合、パートナー制度の案内や、有料課金によるサービス機能差の紹介は有効なコンテンツの可能性があります。

7. User

活発に使っている開発者です。APIなどの場合、初期開発を終了して運用フェーズになっている場合もあります。追加機能などを必要とせず、単に安定稼働して欲しいだけという開発者もいます。

この層にいる開発者の取り扱いは注意が必要です。利用しているからファンであると考えるのは早計で、むしろ嫌でも会社から言われているから使っているだけという場合も多いです。より使ってもらうための中上級者向けのセミナー/ウェビナー案内、カスタマーサクセスを通じた使いこなし術の案内などが良いでしょう。

ただしプロバイダーから認められたいと考えている場合もあります。事例インタビューの申し入れをしたり、事例セミナーへの登壇依頼などによってFunに代わる可能性があります。

8. Fun

サービスのファンで、非常によく使っている開発者です。ただし課金しているとは限りません。ブログやソーシャルメディアによる発信が目立つ開発者になります。

ユーザ会への参加やコアメンバーへの誘い、エキスパート制度による表彰、ハンズオンなどで使える無料チュートリアル資料の紹介、開発パートナー制度など、彼らのプレゼンスを高めたり、収益化を可能にする方法を提案するとよりロイヤルティを高めてくれることでしょう。

ネガポジ

Unknownを0、Funを100とした場合のそれぞれのステージにおけるネガポジ度合いは次の通りです(これはあくまでも筆者の主観です)。

  1. Unknown:0
  2. No opportunity:0〜10
  3. Hate:-100
  4. Beginner:50
  5. Inactive:0〜-50
  6. Unaggressive:0〜30
  7. User:0〜70
  8. Fun:100

Userは取り扱いが注意です。Beginnerはまだ使い始めた直後であり、ポジティブ度合いがかなり強いです。使う機会がないだけのNo opportunityにおいてもネガポジで言えば、ポジティブな印象を持っています。全体におけるポジティブ度合いを引き上げることが、DevRelにおける大事なポイントになってくるでしょう。

ただし登録後のネガポジは登録前に比べて評価の幅が広がりがちです。期待して利用しはじめた分、機能が足りなかったり、自分の思った操作ができないために失望する可能性も高くなります。そういった観点から言えば、デベロッパージャーニーが不明確な段階において、新規登録増を狙うのは得策ではありません。きちんとした足固めをしつつ、初期開発者の満足度を高めた上で次の層を狙っていくべきと言えるでしょう。

無課金ユーザと課金ユーザ

一般的なマーケティングとセールスの関係において、売り上げになっている(またはなっていない)のはクライアントか否かを分ける大きな違いになります。しかし多くのWebサービスの場合、無課金であっても継続して利用可能であるため、同じ尺度で語ることができません。少なくとも1〜4までは課金している状態ではないでしょう。

従量課金のサービスにおいても5のビギナーに対しては一定数の無料枠を提供することが多いです。そのため5から先のステップにおいて課金状態が変わります。実際には5〜8の全ステージにおいて課金、無課金のステータスがあると言えるでしょう。

課金状態になるには幾つかのパターンが考えられます。この辺りはビジネスモデルに関わってきますが、Funになるのは無課金よりも、むしろ課金ユーザの方が多い傾向にあります。

  • 従量課金
  • 都度課金
  • サブスクリプション

無課金から課金に代わるタイミングは様々にあります。課金を嫌がってInactiveになってしまった場合、Userに移行するのは困難になります。いかに嫌がられずに移行させるのが鍵になります。無料枠は上手な手法であり、あらかじめ課金するサービスであるという印象付けをした上で、無料枠の中で試用してもらって価値を認めてもらえれば課金に移行しやすくなります。

まとめ

開発者をステージごとに分類することで、自分たちのサービスで不足している、力をかけていかなければならないユーザ層が見えてきます。特にDevRelの場合、マーケティングと営業のように切り分けができない部分もあるので、満遍なく対応が必要になることもあるでしょう。今後SaaSなどが拡大していくことで、DevRelの中でもインサイド、フィールドと分かれていく可能性はありそうです。

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