コロナウイルスの影響によって、DevRelも大きな影響を受けています。4月から期を新しくする企業も多いので、予算を確保して新しい施策をはじめようと思っていた矢先にこんな状態に陥ってしまったという方もいることでしょう。
特に大きなダメージを受けているのがコミュニティではないかと思います。これまで、日本ではコミュニティにおいてはオフライン・イベントが重視される傾向がありました。しかし、集まって会話することもままならなくなっている現在、コミュニティの熱量も減衰してしまっているのではないでしょうか。
多くの犠牲者が出ている状況ではありますが、日本では欧米に比べると人的、社会的ダメージが低く済みそうな気配があります(もちろん油断はできませんが)。5月半ば、5月末には自粛規制が大幅に解除されることになるでしょう。しかし、それは2月以前とまったく同じ状態を意味しないと想定されます。コミュニティにおいてもいくつかの課題が残ることになるでしょう。
新型コロナウイルスは昨年末から発生したものなので、季節性コロナウイルスのように夏になれば一段落するのかどうかは読めないでしょう。日本で広まっているコロナウイルスの型はヨーロッパから伝染してきたものになるようですが、シンガポールやブラジルなどの湿度や気温が高い国でも猛威を振るっている状況を鑑みるに、夏以降も継続して問題になっている可能性は高そうです。
企業内において感染者が確認された場合、従業員の2週間程度の出社禁止が行われるようになるでしょう。これは従業員に限らず、感染者の濃厚接触者になった場合も問題になるはずです。そうしたケースにおいて、企業が勉強会会場の貸し出しを行い、その中で感染が発生すると、企業自体の出社禁止措置などに繋がる可能性があります。そのため、これまでように会場を借りるのは難しくなるでしょう。
集団感染(クラスター)を生み出す要因になっているのが、いわゆる3密です。距離、対話、空間の3要素が密接した状態が危険だといわれています。勉強会会場はもちろん、懇親会などはその最たるものになってしまいそうです。東京では夜の接待などが原因といわれる事象が多数発生したために、居酒屋などの営業時間短縮、アルコール提供の切り上げが求められています。この状況は自粛解除後、一気に元通りになるとはいえないでしょう。
現在、自粛ムードが強い状態ではありますが、それでもいくつかのイベントが実施されました。音楽イベントや格闘技イベントなどが実施されましたが、この時に行われていたのが、入場者の体温計測、アルコール消毒、マスク着用、定期的な換気実行、座席の距離を空けるなどの対応です。そうした一つ一つの施策を行うことで、感染予防に繋げることはできるでしょう。しかし、ボランティアで行われるようなコミュニティイベントに対して、ここまでの負荷を伴ってまでオフラインにこだわる必要があるのかは疑問です。常に頭の片隅にコロナウイルス感染予防があり続ける限り、オフラインイベントを行う負荷と、オンラインイベントで十分とする考えは秤にかけつづけられるでしょう。
今、一番怖いのはオフラインイベントを強行し、結果としてクラスターに繋がったと認識されることでしょう。もちろん、あくまでも自粛要請なので、罰則がある訳ではありません。今だって人が集まってイベントを行うのに法律上の問題がある訳ではないのです。しかし、社会的な空気感、全体的な自粛ムードがある現在においては、空気の読めないコミュニティは確実に槍玉に挙げられます。万一どこかのコミュニティイベントがクラスターになったとしたら、開発者コミュニティ全体が嫌われる可能性があります。コミュニティは空気感が重視される傾向があるので、オフラインイベントを再開するタイミングは慎重に検討する必要があるでしょう。
現在、コミュニティイベントの多くがオンラインで開催されるようになっています。その結果、地方(東京以外、くらいの意味での地方)の人たちでも時間的、移動を気にすることなく、情報を手に入れられるようになっています。これは地方に住む人たちにとって情報が得やすくなるメリットがある一方で、地方でコミュニティを運営していた人たちにとって「自分たちがイベントを開催する意義があるのか」という問題に直面しています。
元々東京と地方とで情報の伝達、トレンドの変化に1〜数年の遅れがありました。オンラインイベントでもプロジェクト自体のレベル差はありますが、情報だけは伝達できるようになっています。地方コミュニティでは、情報の遅延はあったとしても、その場であって対話することに意義を見出していた部分があります。今回のコミュニティイベントのオンライン化に伴って、情報のインプットに対してはオンラインで満足できるようになってしまいました。その結果、人に会えない状態を強いられていると、地方でイベントを開催する意義が薄くなっています。
ここまではポストコロナ時代のコミュニティにおいて、ネガティブな捉え方をしてきました。しかし、ポジティブな面もたくさんあります。
ビデオチャットサービスが次々と登場しているのはもちろんのこと、それらのサービスが抱えている課題を解決するような仕組みも多数生み出されています。これまではオフラインイベントが優勢だったのは、オンラインでは解決できない課題があったからでしょう。それらを解決できるようになれば、状況は一変するかもしれません。
オフラインイベントでは東京であったとしてもごく限られた人数に対してのみ情報が伝達される状態でした。そして懇親会などを通じて深くコミュニケーションすることで、繋がりを強固にできるメリットがあったといえます。それに対してオンラインイベントでは、個々の繋がりは浅くなりがちです。しかし、情報が東京に限らず日本中(さらには世界中)に伝達されるのがメリットになります。その意味では、(対象が)狭く(コミュニケーションが)深くから(対象が)広く(コミュニケーションが)浅くに変化したとみることができます。コミュニケーション部分を改善できるプロダクトが生まれれば、状況は変わるでしょう。
オンラインイベントを通じて、地方で熱量の高い人を発見できる可能性があります。オンラインイベントでは東京だけではなく、地方の人たちも数多く参加してくれます。そうした人たちとコミュニケーションすることで、コロナウイルスの問題が過ぎ去った時、地方コミュニティを立ち上げる基盤を形成できる可能性があるでしょう。
現在、コミュニティの支部で活動しやすいのは地方(東京、大阪)ではなく、技術スタック(ネットワーク、セキュリティ)になります。テーマを明確に分けることができると、同じコミュニティであってもイベントを細かく実施しやすくなるでしょう。同様に読書会やもくもく会などもテーマを分ける一助になります。
オンラインイベントを通じて、配信に関わるテクニックがどんどん上達してきています。こうした流れはオフラインイベントができるようになっても活用できる場面があるでしょう。オフラインイベントであっても配信できるようになれば、地方をサテライト会場としたり、カンファレンスの配信などでも有効に使える技術になるはずです。
MOONGIFTではコミュニティ育成のサポートを提供しています。現在、オンラインコミュニティにおいても幾つかのコミュニティをお手伝いしています。コロナウイルスの影響は現状を切り抜けてなお、残り続けるでしょう。新しい時代におけるコミュニティ育成を行っていきたい方はぜひお問い合わせください!
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