コミュニティマーケティングのためのコミュニティ、CMC Vol2 が12月21日Sophos社にて開催されました。こちらはそのレポートになります。
まず最初の主催者である小島さんから前回含めた振り返りがありました。
参加者の職種はマーケティングの人が増えてきつつあり、エヴァンジェリストと呼ばれる人たちもある程度いる状況。66%が新規参加者で、これはとても良い兆候とのこと。新しい人が入ってくるのが大事で、前回のイベント参加者の46%が今回も参加しているとのことです。
コミュニティマーケティングで大事なポイントとして上がっていたのが以下の3つです。
後はいつもながらに大事なSell through the Communityの考え方です。場を作って、その人たちに売るのではなく、ファンを通じてその先の人たちに話を広めてもらうことでコミュニティに参加していない人たちに興味を持ってもらったり、購入してもらうという考え方です。
その一例として、AWS re:Invent 2016におけるコンテンツ生成、流通の実態が紹介されました。メディアによる記事20なのに対して、参加者によるブログは120超を越えるとのことです。
まだ試行錯誤しながらなので、模索していることを発信してフィードバックを受けていきたいとのこと。まず最初にPayPalの歴史が紹介されました。ドットコムバブルの時にメールアドレスが普及していたこともあり、メールアドレス宛に送金できるというビジネスからスタートしています。その後上場し、すぐにイーベイに買収されています。去年7月に独立して再上場しました。
PayPalのビジョンは金融の民主化にあります。ユーザは買い手、売り手の両方がいて、野田さんは売り手向きです。PayPalは名だたる企業も使っていますが、ロングテール(中小、個人)が9割を占めています。物販もあるけれど最近はデジタルコンテンツが伸びているそうです。
誰にでも使って欲しいというのが大原則にあります。クレジットカード会社は入り口を狭く(審査)していますがPayPalはどちらかというと逆で、出口側をチェックすることで安心して使える仕組みを構築しています。
導入ステークホルダーはビジネスまたは開発者の二者が存在します。小さい会社では一人なこともありますが、基本的にステークホルダーは別な人たちです。彼らが気にするのは次のようなことです。
野田さんが入社した2年前には次のような課題がありました。
当時は外部で喋ったりすることがなかったそうで、2015年夏頃からまずは開発者イベントのスポンサーを開始しました。そこでエヴァンジェリストでもある岡村さんが登壇し、顔を知ってもらうところからスタートしました。
去年(2015年12月)小島さんに出会い、話を聞いたところで「ユーザに売ってもらう!」という考え方を知ることができました。さらにPayPalはインフラと言うこともあり、実はAWSと近いんじゃないかかと思い至ったそうです。
さらに2016年にはPayPal主催のミートアップ開始し、dots.さんを利用して100人/回、三ヶ月毎に計四回開催されました。
主要なKPIは3つ+α据えているそうです。
達成できていることとして次の項目が上がっていました。
さらに社内にPayPalに対する良い声を回せたのは良かったとのことです。
現状の課題としてはイベントドリブンでしかなく、イベントの日は上がるけど、その後沈んでしまうという問題があります。そこで考えているのが以下のようなことです。
さらにキャズムを越えるためには開発者で良いのか、という疑問もあるそうです。そしてそのためにやることとして次のような施策を挙げられていました。
個人的な感想として、具体的なKPI施策が上がっていたのがとても良かったです。特に定量的なKPIについて真似できる部分もありますし、ドキュメントへのアクセスのようにうまく数値につながらないものであっても試行錯誤の結果なので学べる点が多そうです。
みんなが聞きたいんじゃないかなと言うところでピックアップしました。
自分ゴト化 × フィードバックループが大事。褒めて伸ばす。みんなの承認欲求を満たすのが大事。
自分ゴト化してもらうためには、なるべく多くの人がアウトプット側に回れる場作りが必要。例えばライトニングトークに出てもらう、ツイート/質問/ブログもアウトプットへの入り口として大事なこととのことです。ミートアップ、イベント運営は自分ゴト化の最たるカタチになります。
JAWSは1000人くらい集まる年一回のコミュニティイベントがありますが、Slackでつながって自分ゴト化しています。発表者が心配するのが情報を抜き出されてしまうことですが、出して終わりということはなく、1話すと10返ってくるはずです。
ソーシャルによってフィードバックループがかつてないほど回りやすくなっています。イベントレポートなどもブログで書いている人は皆に見てもらえて嬉しいですし、周りもそれを見ているので関心を引き込みやすくなります。「私もこういう発表してみようかな」と思ってもらえます。
ワナビーズからフォロワーへ、そしてロールモデルに成長させていくモデルが必要です。ロールモデルに憧れて真似る人がフォロワー。一気ではなく、少し上がれる場を用意するのが大事です。アウトプット側になれるきっかけとフィードバックループの流れを作りましょう。周りの人が「いいよね」って言ってくれる雰囲気、流れを作るのです。
内輪だけでなく、どんどん新しい人からフィードバックが来るのが重要で、新しい人が入ってくるサイクルを作るとモチベーション維持につながります。
一言で言えばやってみれば分かります。一つ言えるのはフォロワー戦略で、コンテンツ×可視化×ワンホップ先へのリーチになります。有名なTED動画があります。
最初に踊っているからリーダーなのではなく、二人目のバカがフォロワーになったことで、はじめて一人目がリーダーになります。一人目が踊っているだけだと単なる面白いコンテンツです。
ツイートできる、検索できるのが大事です。そのコンテンツが潜在ターゲットが顕在化します。その意味ではクローズなイベントでは意味がありません。契約ある人たちだけ集める形、いわゆるユーザ会はエンゲージメントは高まりますが、外部からの参加者は臨めません。
琴線に触れるためには間口を広げるのが大事です。間口を広げるためのキーワードは「発見系」「確認系」「同じ目線」になります。それぞれ次のようになります。
つまり、発見系コンテンツと確認系コンテンツを「同じ立場」のスピーカーが喋ってくれるというのが大事です。ベンダーが言うのはダメです。彼らがいっても受け取り側はバイアスがかかっていると分かっているので。今回で言えばPayPalの野田さんが「小島さんの話は良い」と言ってくれたからこそ皆の耳が開いているのではないでしょうか。
そういったコンテンツはお持ち帰りしてもらいやすくなります。
必要なのはポジショニングの理解と量的、質的KPIになります。
コミュニティマーケティングは銀の弾ではありません。どこに響くのか整理しないといけません。
基本的に企業である以上、今あるビジネスを大きくしたいというのが基本でしょう。そこで考えたいのが三角形(下の写真参照)で、底辺と高さを増すことで一気に面積が大きくなります。
野田さんの話でもありましたボーリングピン戦略を考えましょう。ボーリングはファーストピンに正しく当たれば、全部のピンに当たらなくても倒せます。
・コミュニティ、エコシステムでのベースライン拡大 ・大規模案件、顧客へのハイタッチ
顧客はたとえ認知を増やしても自分ゴトになっていないと腑に落ちず、買ってくれません(下の写真参照)。 )。
その意味ではリードジェネレーションだけやっていてもダメです。リードを刈り取って最終的にお客がいなくなってしまいます。常に新しい人たちを集めてコミュニティ運営を続けていけば、ハイタッチの人にもコミュニティの影響が出てきます。
数値設定が可能であればツールを使えるはずです。
数値設定が難しいが重要です。量的だけだと辛いです。なぜなら量を無理矢理満たす方法を私たちは知っているからです。参加者ばかり求めたり、といったことを続けていると意味がなくなります。
コミュニティを他のプレイヤーより「見つけられる」「頼られる」場として活用しましょう。AWSのようなベンダーは総取りですが、コントリビューターは他に取られちゃうかも知れないと危惧します。しかし胴元になるとインプットが大きくなるはずです。
インバウンドを増加させるためにはワンホップ先にリーチできる場 × 適切な情報・コンテンツ投下がキーになります。
有名な例として、某「ブログの会社」として知られるクラスメソッド社があります。例えば彼らはAWSキーノートをリアルタイムに投稿しています。ブログの件数にして年間2,500件です。そうなるとAWSの情報を調べてもAWSのブログではなく向こうに行ってしまいます。月間35万PVで、彼らは営業チームがいません。ほぼインバウンドです。とにかく検索するとすぐ引っかかるので相談が増えます。
つまり、その分野で一番になる、突き抜けるのが大事です。横(競合)を見るより前(顧客、市場)を見ましょうということです。
内輪になったらNGで、場をファシリテートできることが大事です。そのためには製品に愛があるかどうかが大事です。
選ぶ人たちにも一貫性がないといけません。
AWSのオーディエンス設定では採用して良いか迷っている人もスコープに入っています。さらにビジネス企画の人も入りやすい形にしています。こうやって稟議通しました、こうやって社長のOKをもらいましたとか、そういった話題に取り上げます。
どのオーディエンスに対してインフルエンスしたいか最初に設計しなければなりません。相手によってコンテンツ、スピーカーも決まってきます。例えばビジネス企画にインフルエンスしたいのはSIerの人たちです。そうした人たちがSell to the Communityをやっているとコミュニティから弾かれてしまいます。無償でどんどん情報を出した人のところに集まっていました。
かつてはノウハウを出しちゃうのは損失だといわれていましたが、現在ではIT/クラウドは進化が速くて、それに伴って情報が認知、劣化するのが速いですどんどん出してしまった方が良いです。
変わった例でいくと、eJAWS(エンタープライズJAWS)は自分でビールついでくださいはNGです。でも同じレイヤーの人たちだけを集めるとビールをつぎ合うものです。彼らの話としては社長の稟議とかセキュリティとかになります。
オーディエンスは混ぜて良い範囲、混ぜちゃいけない範囲があります。
チャットワークは205カ国、11.9万社で導入されています。さらにビジネスチャットで7割のシェアです。導入企業は非ITが多いです。なぜかというとエヴァンジェリスト制度を用いており、例えば仕業の人たちなどに情報発信を行ってもらっています。
現在エヴァンジェリストが20名います。先日、第一回飲み会を行いました。熱量がもの凄く高いです。そして彼らの熱量で社員のモチベーションアップにもつながりました。単にエヴァンジェリストを増やせば良いわけじゃないので、増やし方やコミュティの運営体制、コンテンツ、コミュニティ作りを今後どうしようかと考えているところです。
売らないで売れるが良いんじゃないかと思い始めています。プッシュ&垂直型からプル&水平型になってきています。お客さんにぜひ使いたい、買わせて欲しいと思ってもらうのが大事で、それによって取引がフェアになると思います。
例えばとある方はRancherのミートアップに参加して触って惚れたとQiitaに書いてくれました。Facebookの投稿に対しても66人のコメントがあり、売ろうとしていた時の10倍反応があります。
お客様は決して神様じゃありません。お互いフェアな関係になりましょう。
これまでの汚点としてリストラをやってしまったことがあります。リーマンショックで新規がとれなくなったことが原因ですが、これを契機として、クラウドので積み上げ型ビジネスに切り替えました。そのため、愛され続ける必要が出てきました。
例えば顧客満足度調査を実施して8割満足という結果は出たものの解約率は上がっていきます。そこでNPS(ネット・プロモーター・スコア)を導入しましたが、利用者は機能紹介されるより情報交換したいというニーズが浮かび上がりました。そのため、機能紹介セミナーはうまくいきませんでした。
今はNPS + CES(顧客努力指標)を用いています。さらに周辺情報を流通させています。
ライセンスは200万ライセンスで、もっと情報流通させていきたいと思います。
SendGridはブラックフライデーで16億通/日くらい配信しました。日本では2013年に立ち上げています。日本向けとして、以下のような施策があります。
さらに以下の活動に力を入れています。
− DevRel頑張ってる − コミュニティへの参加
DevRelは開発者との距離を縮めるための活動です。アイディアソン、ハッカソン、MAなどに積極的にスポンサード、開催しています。SendGridではAPIを使われなくても開発者の中に入っていく文化があります。
その結果として開発者への認知度があがったり、API提供企業との協業も実現できています。
個人的には様々な開発者コミュニティに参加したり、そのコミュニティの中でお嫁さんも見つけました。コミュニティに参加すると色々良いことがありますよ!
場所を提供すると良いぞ、という話をします。言いたいことは2つだけです。
場所があるので、そこを使って自社コミュニティ作りに活かしています。自分の製品を知らないユーザを4〜50人集めるのは大変ですが、場所を貸すことで実現できています。
この後、懇親会が開催されました。コミュニティで懇親会は大事な要素とのことで、それを体感するという意味も含まれています。大いに盛り上がっているのが分かるかなと。
今回はKPIや設計法など、個人的に聞きたかった内容がかなり盛りだくさんに含まれていました。ライトニングトークも(ほぼ)全員3分以内に収まっていたのも素晴らしかったと思います。何より参加者の熱量が高く、コミュニケーションも活発なのが凄いです。
来年も引き続き行われていくとのことで、時間さえ合えばぜひ参加したいと思います。
メールにてDevRelに関するニュース、アップデートをお送りします。
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